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今月の一冊
「砂の女」
安部公房
 昭和37年に発表された安部公房の代表作品。
砂丘の村に新種の昆虫を探しに訪れた男性が、村人に一夜の宿を紹介するといわれ、深い砂の穴の底にある家を案内されます。家には寡婦が一人で住んでおり、家が埋まらないように砂を掻き出す仕事に追われています。翌日、穴から登るための縄梯子を外されたことを知った男は、自分が砂を掻き出すための男手として、穴底に閉じこめられたのだと気づきます。女と二人きりの生活をしながら、男は様々な工夫をして何とか脱出を試みるも失敗し、穴底の家で数ヶ月が過ぎてしまう・・・
そんなことなどあり得ないと誰しもが思う不条理の世界でありながら安部の描写は緻密でリアリティに徹しています。まるで自分が穴底に閉じこめられているような息苦しささえ感じます。穴底での単調な生活空間が舞台でありながら、心情描写を駆使して、読者を引き込む長編小説に仕上げる筆力はまさに天才的です。
「砂の女」の舞台となった砂丘の村は、酒田市の浜中地区であると安部公房自身が書いています。小説の中で「S駅」からバスに乗ったとありますが、これは酒田駅のイニシャルと思われます。今は防砂林に覆われ飛砂の被害もほとんどありませんが、昔は家の中に砂が入り込み、一夜にして砂の壁ができるなど、大変苦しめられました。砂と戦う主人公や村人の姿は私たちの先人そのものかもしれません。
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佐藤聡 |
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